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追悼・さくらももこ氏


 去る8月15日に逝去された「さくらももこ氏」の早すぎた死を心から悼むとともに生前のさくら氏のご活躍を称え、今や「長谷川町子氏」の『サザエさん』に次ぐ国民的アニメとなった『ちびまる子ちゃん』に並ぶの秀作、『コジコジ』についてご紹介させて頂きます。

 

 『コジコジ』とは、月刊少女マンガ誌「きみとぼく」にて1994年12月号から1997年5月号にかけて連載された さくらももこ氏作のナンセンス・ギャグ漫画で、テレビアニメ版においてはTBS系列において1997年10月から1999年9月までの間、毎週土曜日17時30分から18時00分の放送枠(関東地区)で全100話が放映されました。

 

 この度、私がこの『コジコジ』という作品をご紹介させて頂くに至った動機は、私自身のこの作品に対する強い思い入れからであり、テレビシリーズの放映終了からこの19年の間、再び『コジコジ』が世の人々に注目され、新作のテレビシリーズとなって復活する日をずっと心待ちにして来たためです。

 

 しかしながら過去のテレビシリーズの『コジコジ』は、確かに一応に2年間(100話)もの放映計画を全うして終了する事は叶ったものの、実際の視聴率や話題性については決して芳しいものではありませんでした。
 この要因について私は、番組の放送時間枠(土曜日の夕方)が本来、最も高評価を期待できたであろうターゲット層(青年層)に「発掘されにくい時間帯」に設定されてしまった部分が大きかったのではないかと考えています。 

 

 こういった現象は現在、我が国のアニメ作品として初回から40年もの歳月が経過しているにも関わらず、今も尚世代を越えた支持層を保持して国際的な高評価を維持し続けている『機動戦士ガンダム』シリーズに於いても見られます。

 

 ガンダムシリーズの最初の作品である『機動戦士ガンダム(通称:ファースト・ガンダム)』は、当初の放映(子供を対象とした時間枠)に於いては視聴率が全く稼げず、放映打ち切り(全52話の計画が43話に短縮された)にまで追い込まれるほどターゲット層に不評だったそうです。
 しかしながら深夜枠での再放送において中学生以上の視聴者の圧倒的支持を得る事に成功し、それ以降その人気が「社会現象」にまで発展して、現在も尚世界中のファンに支持され続けているという経緯があります。


 私は、さくらももこ作品の最大の魅力は、『ちびまる子ちゃん』の世界の中に毎回毎回「これでもか」とばかりに盛り込まれているような、どこか他人事とは思えない「あるある」の「皮肉要素」と、さくら氏の女性らしい優しく繊細な絵のタッチが融合して作られる独特の世界観にあると考えています。

 

 つまり、同じ「国民的アニメ」とは言っても『サザエさん』が受け入れられてきた「古き良き時代」と、さくら氏の『ちびまる子ちゃん』を受け入れたこの「平成の世の中」とでは、人々がアニメ作品に求める要素の複雑さには雲泥の差があり、さくらももこ作品に成功をもたらした斬新かつ、最も決定的であった要素は『サザエさん』が持つ「爽やかさ」とはむしろ真逆の「ブラック要素」にこそあったのだと私は考えています。

 

 これも私個人の見解になるのですが、『ちびまる子ちゃん』が子供の頃のさくらももこ氏を主人公とした「朝ドラ的」要素を残した健全な作品であるとすれば、『コジコジ』は大人になったさくらももこ氏が「その世界の神」として、思い切り彼女の「独自の世界観とポリシー」を表現した力作に当たるのだと考えています。
 つまり、アニメ版の『コジコジ』は、最初から『ちびまる子ちゃん』と同等の時間帯に提供されて好評を得られるジャンルの作品ではなかったと考えるのが妥当であり、『ちびまる子ちゃん』以上にさくらももこ作品らしかった『コジコジ』の真価が、多くの人々へ伝わる機会が得られないままさくら氏が天命を全うされた事実は、『新たなコジコジ』を心待ちにしてきた私にとってどれほどのショックな出来事であった事か表現に足る言葉を思い付きません。・・

 

 

 さくらももこさん、あなたが私たちに残してくれたたくさんの夢と希望は、これからもたくさんの人々の心の中で生き続け、多くの人々の心の中を照らし続ける灯となることでしょう。

 

 今まで本当にありがとうございました!!

 


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