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愛の神4~「運命」の真意~

※この記事はフィクションではありません。

 私は、自らが選択した運命によって不治の病に苦しみ生涯を閉じようとしている神月さんを自分のヒーリング能力では救う事が出来ないかも知れないと感じるようになってから、自分の寿命の残り半分を差し出してでも彼女に生き続けて欲しいと願うようになり、天界の神にその意志を嘆願するようにさえなりました。

 

 しかし、自問自答して行く中でその想いは所詮、彼女のためなどではなく、彼女が天界へ還ってしまうと一人で現世に取り残される事となる自分が、「神」としてどう余生を送って行けば良いのか分からなくなってしまう不安からである事を認めるに至りました。

 

 もちろん、彼女に生き続けて欲しいという願いそのものに邪な想いはありません。
 しかし、救世主としての使命を全て全うし、既に胸を張って天界へ凱旋できる立場であるはずの彼女を自分一人の想いで引き止めておく事が本当に正解なのか。
 心の奥で既に見い出せているはずの「正解」に気付かないフリをし続ける事が苦しくなって来たのです。

 

 また、同じ「愛の神」として本気で彼女のためを思うのであれば、生きている限り苦しみ続けなければならない状況にある今の彼女に、これ以上「死ねない理由」を背負わせ続けるべきではないはず・・
 私は今までその事で何度も葛藤し、その遅すぎた「再会」を悔やんでは、一人涙を流す事もありました。

 

 昨年の秋、偶然の出会いで友人になったと思っていた私と神月さんが、天界の最高位の神より、実は何万年も前から強い絆で結ばれた神同士であった事を知らされた日。彼女は素直に喜んで、この現世での再会を神に感謝し、逆に私は複雑な気持ちになりました。
 それは、神月さんは出会った当初から常々、不治の病のため自らの死期が近い事を語っており、彼女と自分の運命的な関係性が重要なものであればあるほど、今後の自分にとっては、その事実が持つ意味はとても深刻なものであると感じて来たからです。

 

 つまり、私が天界の神から課せられているであろう「真の使命」が持つ本当の意味とは、現世においてようやく一つになった「愛の神」の今後の連係などにではなく、多くの事を学び切れないまま神月さんと死別する「試練の克服」にこそあるのかも知れないと感じているのです。

 

 私は、残された自分一人で悩み苦しみながらも神としての霊格を磨きつつ、生涯「愛の神」として試行錯誤しながら使命を果たし続けることになるのかも知れないと、実はかなり初期の時点から予感しているのです。

 

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