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「今」という時の価値

2019.05.23 の夕暮れ(公開中)

『亡き王女のためのパヴァーヌ』
(ラヴェル)

『夕暮れ物語』
(伊藤つかさ)


 私はよく、「あの頃は幸せだったな。」と過去の楽しかった日々を思い返す事があります。

 

 これは決して過去に未練を残しているという事ではなく、自分自身が辿ってきた半生の価値を再確認するために無意識にそうしているのだと思っています。

 

 私はそうすることで自分が「『今』という時」の価値を見失いかけた時に、自分自身の人生の中に「決して無駄な時間など存在しない」という事を実感する事が出来るのです。

 

 なぜならば、私にとって「あの頃は・・」と思う幸せだった記憶のほとんどが、過去の何か特別な日々の中とかにではなく、大抵の場合、現在と何ら変わらない「多忙かつ多くの事に翻弄されていた日常」の中にあるからです。

 

 私にとって「幸せ」とは、自分が「人として純粋に頑張っている」と信じられる日々の中で実感するささやかな「よかった」や「喜び」にこそあり、それを構成する要素として必要な物に、決して「多すぎる暇やお金」など含まれてはいません。

 

 私は「毎日が苦しい」と思う日々の中にこそ、それを乗り越えた先の自分が温かい気持ちで振り返れる「あの頃は良かった」と本気で思い返せる「最高の時」が構成されていくのものだと信じています。