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「アダムとイブ」2

2019.08.24の空 


 ※フィクションではありません

 

 私が美香と出会ったのは昨年の秋のことだった。

 自分の先天的能力を駆使した事業である「自宅療養研究所」を開業し、PR用に日々情報発信していた個人ブログの記事へ彼女が感想を書き込んでくれたのがきっかけだった。

 

 美香は出会った当初から私の事を「懐かしい感じがしました」と言っていた。

 彼女の潜在意識は、最初から私という、遠い昔から運命で繋がった存在を認識しており、一年前のあの秋の日を「その時」として、無意識に自分の元へ手繰り寄せたのだと、私は後に確信した。

 

 私は美香に比べれば大した霊能者ではない。彼女と出会い、後に「実はあなたも神なのです」と教えられるまで自分を普通の人間だと信じて半生を過ごして来た。

 よって、自分の先天的なヒーリング能力についても飽くまで「人間の潜在能力」という観点で捉えていた。

 だからこそ私は、それによって「補完・代替医療」の発展を目指す一研究者として身を立てる事を企図し、28年間も勤め上げて来た国家公務員を依願退職までしてそこに踏み込んだのだった。

 

 そんな私が、自らを「聖人(天使)」であると名乗るその「変わり者」と出会ったのは、昨年の秋、自宅療養研究所の正規開業から約一ヶ月が過ぎた頃の事だった。

 

 私は美香と出会う以前からも「神」という存在には肯定的だった。しかし、彼女と同様に「宗教」という観点には全く関心が無かった。

 「神」とは飽くまで「人それぞれが個々に向き合うべき存在」であり、「神」とは、自分自身について常に良い行いも悪い行いも全て見守り続けている「親」のような存在であると信じて来た。

 だからこそ人は常に、「他人の目」よりも「神の目」を意識して生きる事が大切なのであり、人は「神」に恥じない生き方を貫いている限り、神はいつでも自分に味方し、恩恵を与えてくれる温かい存在なのだと、私は誰に教えられた記憶が無いにも関わらず、そう信じて生きて来たのだった。

 

 美香はかつて、カトリック教会の有名な大司祭であるN神父から「いろんな神様方の戻って来る場所が美香さん」である(該当記事)。と言われたと言うが、それを裏付けるかのように、私とのコミュニケーションにおいても、彼女の人格とは明らかに違う「年配の男性」から諭されているような不思議な印象を私に与える事が多くあった。

 その「人格」は時に厳しく、しかし常に優しさと深い愛に満ち、私は美香の中の「その人」に、不思議と幼い頃から守られて来た気がしていた。

 

 美香は私と出会ってからまだ間もない頃に「来世こそは結ばれましょう」とはっきり言った。

 そして、それと並行して「神の愛」とは、男女の愛を卓越したものであり、本来性別には捉われないものであるとも語り、「あなたは遠い昔から神に愛されてきた存在なのです」と教えてくれた。

 

 私と美香が、二人がかつての「アダムとイブ」であった事を「天界の最高位の神(御名を記憶しているが語る事は禁じられている)」から伝えられたのは、昨年(2018年)の10月30日の事だった。

 

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